無知蒙昧

東京に来て5年。今までを振り返ると、常々身に付いたと感じるのは、経験と感覚だ。新た
な体験には、毎度一喜一憂してしまい、時間が経って落ち着いていく。これをもっと短く、
それこそ無くすぐらいにしたいものだ。それから考えると、今も知らぬ間に一喜一憂してい
るのだろう。

5年間で20名を採用をし、20名が去った。取りあえず続ける人材など必要ない。今後、
不屈の精神を持ったような人材に出会えればそれで良い。

過去何度も、愚図るスタッフを、紙飛行機を再び上昇させるように、下から息を吹いたり、
団扇で仰いだりと、馬鹿な事をやって来た。勿論そうしたことが必要な場合もあるが、それ
によって自身の感情や精神が擦り切れる事も多く、疲れ果てて残るのは少数となる。

そんな中でも、共に頑張れるスタッフが残るのは心強い。三度目の二名体制となり数ヶ月が
経つが、過去二度の感覚とは全く違う。互いの自立が進んだからかバランスが良くなった。
結局我々の人間力に磨きを掛けねば、人材は定着しないということだろう。

人は植栽のようなものだ。構い過ぎれば根腐れをし、構わなければ枯れて行く。ほどほどに
接し、放っておけば伸びている。

人を変えようとするよりも、自身を磨き、庭師としての技量でも磨くこと。頼りなく情けな
い人間に人は付いてこない。そんな人間から干渉されれば鬱陶しいだけだ。仮にそれで上手
く行っても、格好の悪いチームが出来るだけだ。

人に対して馬鹿みたいに怒ってばかりしておらずに、感情をコントロールし、本でも読み、
苦手とする事に立ち向かい、新たな経験をして、自身を磨け。無知蒙昧な人間が、偉そうに
するものじゃない。これをもっと自身に言い聞かせたい。たまには不安で心配になり、駄々
をこねてスタッフに怒ることもあるだろうが、その後きちんと勉強をして、怒った後の手本
になる努力を忘れずにいようと思う。